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熊岡路矢著『カンボジア最前線』(岩波新書)を100円で買った

 11月に4泊5日でプノンペンを訪問してからカンボジアのことが気になって、いろいろ本を読み始めている。

 基本書のようにしているのが山田寛著『ポル・ポト<革命>史 虐殺と破戒の四年間』(講談社選書メチエ、2004年7月10日発行)。山田氏は1941年生まれ、東大仏文科卒業後読売新聞サイゴン支局、バンコク支局、パリ支局、アメリカ総局長などを経て、この本を出した時は嘉悦大学教授として国際関係論、アジア事情を教えていたという。これは暦年体の歴史書なので拾い読みをしながらデータをピックアップしたりしている。

 2008年2月に出た新川加奈子著『カンボジア、今 ポル・ポトの呪縛は解けたのか』(燃焼社)は北大卒、東大医学部大学院で公衆衛生学・医学博士となり神戸海星女子学院大学で教えながらJICAコンサルタントとして医療保険分野の調査に加わり、英エクセター大学で人口学を学び開発学修士を、2003年には精神保健福祉士の資格を取った方による10ヶ月間のカンボジア滞在後の入門書。

 <ポル・ポト派裁判では、対象者がすでに数人ほどになってしまった「ポル・ポト派」を、約60億円という費用をかけて裁くのである。ましてやその資金の半分近くを日本が拠出する(約24億円)となると、関心を持たざるをえない。>

 <滞在中に「ポル・ポト派裁判の開始」に関しての大きな動きがあり、新聞やその他において幾つかの影響があった。その中でも予想外の影響は、政府による「言論統制の動き」であった。2005年末から2006年初頭にかけて、数人の人権保護活動家が逮捕されたのである。観光ガイドが、外国人に話す内容でさえ、監視されているというウワサさえ広まった。>

 <カンボジアは、東南アジアの国の中で最も開発の遅れている国の一つである。現在、多くの国が援助をしているが、そのため援助漬けになっている感が否めない国でもある。また、残念ながらインドシナ半島に存在する国の中で、今後10年から20年間の間に一番発展の見込みの薄い国でもある。インドシナ半島を縦貫するに高速道路建設が2008年から始まるが、この道路が建設されると、遅れているインフラ整備の拡充が期待され、多くの外国からの民間投資の可能性を生み出す。しかし、タイ、そしてラオスベトナムを縦貫する予定であり、カンボジアには恩恵が見込まれない。>

 <ポル・ポト政権が終わって30年余り、「彼らの今」は、どこにあるのか? 本書では、約4年間NGO活動を通じてカンボジアとの関わりをもち、2005年から約10ヶ月間、観光都市シェムリアップに、NGO現地代表として国際援助活動した著者が、実際にアンケート調査した結果や現地にて得られた資料を元に、カンボジアの現実と将来を見つめる。>

 <カンボジアにおける子どもの問題で、深刻な問題の一つとして「児童人身売買問題」がある。人身売買は、カンボジア人の子どもが主であるが、隣国の子どもたちそして若者をも巻き込んでいる。日本へのガイドブックにこんな記事があった。「女と麻薬を求めるなら、カンボジア。特に女を長期で囲うなら、売春組織ではなく個人交渉になるが1ヶ月単位で女を買うことができる国である」。なぜこのような情報が流れるのか? 人身売買が発覚し、逮捕されても、裁判官に賄賂を支払って、実刑を免れることができる国だからである。内戦後に有効な司法システムが確立されなかったため、賄賂を使って告訴を免れるのは簡単なのである。>

 <現在、カンボジアには鉄道が機能していない。鉄道を走らせるだけのエネルギーも不足しているが、管理するための人材も決定的に不足しているとのことである。もちろん治安の問題もある。すでに線路はさびだらけになり、車が通る道に変更されてしまった箇所も多くある。しかし一方で、首都プノンペンのデパートの駐車場には、自家用車が溢れている。このアンバランスの状況は、何が根本原因なのだろうか? 何故、隣国と同様な発展性がいつまでも予測できないのだろうか?>→①ポル・ポト政権下での負の遺産余りにも長く大きいものとして、現代カンボジアに居座っていること、②現在社会の中での妥協と将来の展望に対しての妥協が、国という単位としてそして個人の単位にまで及んでいること、③私たちはポル・ポト時代という悲惨な事件を背負っているので、豊かな国に援助してもらうのが当然という意識があること、④グローバル化は貧富の差を縮めて安定した成長をもたらすという理論は、カンボジアにおいては機能していないこと、⑤保護する義務を負う国家にその能力がない場合、国際社会が介入すべきであるという考え方が、9.11までは存在した。しかし、「イラク」においての出来事の余波を受けて「国際社会の保護責任論」には現在支持が集まらない。その結果、カンボジア社会は取り残される国になってしまった。

 ということで、新川さんは<ポル・ポト時代の多くの負の遺産からの呪縛を、完全に解き離さない限り、前進はない。ポル・ポト政権が終焉してすでに30年。そろそろこの呪縛から抜け出し、国際社会で信用のある国に成長することを期待しこの本の締めとしたい。>と結んでいる。

 新川さんは今のカンボジアに何点を付けるのだろうか?

 それにまだ読んでいないが、図書館から借りてきて手元においてあるのがデーヴィッド・チャンドラー著山田寛訳『ポル・ポト 死の監獄S21』(白揚社、2002年11月15日刊)、波田野直樹著『キリング・フィールドへの旅 カンボジアノートⅡ』『アンコール文明への旅 カンボジアノートⅠ』(いずれも連合出版刊でⅠは2006年1月21日、Ⅱは2006年12月1日刊)。それと直接、カンボジアではないが、この時代の記録である日野啓三著『ベトナム報道』(講談社文芸文庫2012年1月10日刊、1966年に出た単行本を文庫にしたもの)である。

 順番に読もうと思っていたのだが、昨日(2016年12月29日)、神保町の古書店を覗いて歩いていたら、田村書店の100円均一の棚に熊岡氏の『カンボジア最前線』を見つけて、すぐに買い求め、昨夜自宅で午前様になるまで読み続けた。

 また120㌻までしか読んでないが、この本は面白い。1993年5月20日刊の岩波新書岩波新書ということで、食わず嫌いしていた感があり、もったいないことをした、反省したくらい面白い。不自由なカンボジそれこそ入国も至難の業、食べ物もなく、日本への通信手段もない、新聞社、通信社、テレビ局の支局も大使館も領事館も何もない状態で、NGOで人道援助をするためにカンボジアに入り込む。その記録だから、面白くないわけがない。

 あと、本に出てくる日本人の方々がみなユニークで素晴らしい。本自体が25年ほど前の話であり、彼らがごかどうかも不明だが、お話をうかがいたい方々である。